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Subsonicとは(2020)

Subsonicとはミュージックストリーミングサーバのひとつです。

この分野では有名ではあるのですが、フォーラムには最近Subsonicをあまり知らない若い世代も流入しているようです。
令和時代の世情を加味して加筆修正します。

(考えてみれば2年おきくらいに更新していることになるのですが、それくらいのスパンでも世の中変化があると実感)

Subsonicの機能

今やgoogle play musicやspotifyを知らない方はいないでしょう。
Subsonicは大体あのようなものを自分の独自環境で行うためのサーバと思えばよいです。

成立順序はどちらかというと逆です。
今の学生さんが子供の頃には、リモート環境で音楽を聴くためには皆そのような環境を構築していました。
おおざっぱに言うと、それらを単純化した上で規模を拡大し、お金を取れるようにしたものが有料音楽サービスともいえます。

以下引用。

Subsonicの主な機能

  • 使いやすい
  • 様々メディア形式に対応
  • テーマとか言語など、UIがカスタマイズ可能
  • 様々なクライアントが存在
  • 外部のサービスと繋いで画像や歌詞等を利用したり、リンクが利用可能
  • 安全
  • Chromecast、Sonos、ポッドキャスト、DLNA/UPnP等多数の拡張機能が存在

Windows上で楽曲管理を行うためのソフトはありますが、おおまかにいえば似た仕組みをしています。
アカウント管理機能があるので、家族みんなでストレージを用意して共用したり各自でプレイリスト管理したりできます。

有料音楽サービスの対比

有料クラウドサービスで何でも解決できるならよいですがそうでもありません。
簡単に言えば自由度が全く異なるので、依然として個人の楽曲管理を行うためのサーバには一定のニーズがあります。

一般的に対比されやすいポイントは以下のあたりかなと思います。
以下のような項目がいくつか当てはまる場合、自前のサービスでの管理を検討した方がよい可能性があります。

ジャンルや楽曲に縛られたくない

有料サービス各社の間には、アーティストを抱えるレーベルとの駆け引きや同業他社との覇権争いのようなものがあります。
残念ながら、お金を払ったからといって必ずしも聴きたい曲が聴けるかどうかはわかりません。

  • マニアックな音楽をよく聴くから、普通の音楽サービスにはない
  • 聴きたいアーティストの契約先がいくつかの音楽サービスに分散していて一本化できない
  • ちょっと古い曲がない
  • 好きなアーティストの曲はあるけど一部しかない

いくら安価で何千万曲聴けても、趣味が合わなければ意味がありません。

個人用の楽曲管理サーバであれば手持ちのものを入れるだけです。
ちょっと昔の音楽はBOOK OFFで大人買いした方が早いです。
別に物理媒体に限ったことではなく、ダウンロード形式のものを購入して自分のサーバに放り込んでも同じことです。

 自分の聴きたい曲は自分で決める という当たり前のことができます。

どうしても読みたいものがジャンプとマガジンとサンデーに分散した場合、全部買うか他の方法を考えなくてはなりません。

既に大量の楽曲を保持している

これは今の学生さんに想像しづらいかもしれませんが。
CDをフル活用していた今のアラサーアラフォーは、CD創世記からCDを買い続けています。
途中で捨てていなければ、とんでもない量のCDを持っています。バブリー

ダンボール数箱くらいは別に驚く量ではなく、音楽好きな方ともなれば壁や本棚が埋まる程度では済みません。
引っ越しのときに途方に暮れるパターンもあれば、ある日CDの劣化が目に見えてきて驚愕するパターンもあります。

CDはCDで良い面もあるのだけれど、限界を感じている方も多いでしょう。
CDを電子化して媒体を泣く泣く廃棄する流れは、実は極端なデジタル狂だけが主張する話ではありません。

昭和の方々が実は静かに直面している「CDの大量管理はきつくなってきた」という物理的な問題です。
解決のために楽曲を電子化し、その延長として音楽はPCやスマホから聴くのが主体になるという変革が起こります。
何でも電子化するのは味気ないですし寂しいですが、 CDが溶けて使えなくなってからでは遅い です。

デバイス業界には、ソフトウェア化されたデバイスは物理デバイスに戻ってこないというジンクスがあります。
ビンテージという概念がある音楽の世界ではわかりませんが、初期プレスのCDは寿命が終焉に向かっているのは確かです。
レコードがそうであったように保存状態の悪いものから順に花瓶敷やカラス避け、フリスビーに転用していくしかありません。

音楽サービスは縛りが多いと感じる

有料音楽サービスはフォーマットが固定だったり、ビットレートの調整の選択肢が少なかったり。
キャッシュの使い勝手がいまいちで定期的に接続しなくてはならなかったり。
ロスレスやハイレゾも扱えるサービスもありますが、契約料が高くなったりします。

個人用の楽曲管理サーバであればこの辺りが柔軟です。
聴くときに自動で好きなフォーマットに変換してスマホやPCで聴くことができます。

バックアップも兼ねて可逆圧縮で無損失の状態の大きなファイルを保存しつつ、利用時にコンバートして聴くことが可能です。
ですので、今の学生さんよりちょっと上の世代の方々はこぞってNASに音楽を放り込むわけです。

これは今の学生さんに想像しづらいかもしれませんが。
企業の提供するサービスは 突然運用方針が変わったりなくなったりする可能性がある のもご存知の通りです。
ジオシティーズもSoundVQももうないのです。

音楽サービスのコスパが疑わしい

これはとても個人的な意見ですが、 楽曲管理のためだけに月1,000円払うのはコスパが良くない場合 があります。

例えば、年間12,000円と考えるなら、もう少し出せばVPSを借りられます。
VPSは用途が音楽だけではなく他の用途にも使えます。

さらに5年で6万円と考えるなら、割と良い性能のNASを買って減価償却できます。
6万円のNASが5年きっかりで壊れるわけがないので、音楽以外にも長く使えて元を取れます。
我が家には20年近く稼働している長老のようなbuffaloのNASがありますが、30年で魔法使いになれるそうです。

6万円のストレージが高いか安いかは人によります。
ですが、現代人のライフスタイルから考えると6万円のデジカメやビデオ、コンポのような家電より有益かもしれません。
そしてあくまで比較の目安にしているだけであり、安くてよいものもあります。

もちろんイレモノに関わる費用だけなので、その他の維持費や中に入れる音楽、設置にかかる手間(自分の人件費)は別です。
とはいえ音楽単体ではなく、いくつかの他の用途と組み合わせて考えると実質単価は下がります。
トータルで考えるとわざわざ音楽サービスを契約するほどでもない、というケースも出てきます。

有料の音楽サービスは裏にアーティストとの契約を抱えているため、無根拠に価格設定をしているわけではありません。
あるいはそのような大人の事情があるため、低価格化と品質向上を同時に推し進めるのは容易ではありません。
無理に低価格化しようとすればアーティストの離反を招くため、現行のビジネスモデルで競争すれば頭打ちするでしょう。
というか今の時点でも結構アーティストが虐げられていてとても可哀そうです。

一方、VPSやNASは長期的に見れば性能×費用の効率は単純に向上するので、コスパ自体は年々よくなります。
実際最近のNASは高性能化しており、昔のファイルサーバと同じようなことが単体でできるようになっています。

ストレージ用途でのコスパに関しては自前>有料音楽サービスという傾向が覆ることは、現時点では考えにくいです。
音楽サービスを、常に聴いたことのない曲を聴き続けるラジオ替わりと考えている方のコスパはまた別です。

他の楽曲管理サーバとの対比

楽曲視聴のソフトウェアに対する要求事項は単純化すると 探す  聴く の2点のみです。
NASに最初から搭載されている機能でもある程度のことはできるはずなので、そういった意味では何を使っても大差ありません。
NASの説明書を見ながらネットミュージックをとりあえず始められると思います。

少し使ってみてどの程度のことができるかわかってくると、色々と不満が出てくるかもしれません。
不満が出てきたときに、トリッキーな管理で解決を図るアプローチもあります。
しかし楽曲管理で一度独自性の強い方向性に進むと、その管理方法を一生引きずることになります。

理想は、曲データを放り込んでおけばサーバが勝手に整理して簡単に聴けるようになる状態です。
それらを解決できるようなサーバの導入を検討し始めることになります。

このようなときにSubsonicのようなサーバが必要になります。
割と近い用途のサーバとしてkodiやPlex、JellyFinなどがあります。

極論好きなもの使えばよいです。

私の考えるSubsonicの特徴

メディア関連のソフト分野では、歴史上独り勝ちしてきたソフトというものは皆無であり不動ポジションのソフトはありません。
これは用途が多岐にわたっていて、個々の一般ユーザが重要視するポイントが少しずつ違うためです。
例えばものすごく詳細すぎるソフトが誰にとっても便利であるとは限りませんし、逆も然りです。
ほぼ発生しないリッピングエラーというエッジケースでソフト選定する人もいれば、一日5回歯磨きをしない人もいます。

個人的には「気に入らなければ使わないか書き換えればよい」という考えを持っています。
そのため楽曲管理を兼ねたストリーミングサーバには以下のような点を求めます。

  • 楽曲管理の方法にできるだけ癖がなく機能が明確
  • 長期的に便利に使えるサーバとして存続可能

海外製のサーバで修正なしに満足に動くものがない以上、私にとっては 長く使えて改修しやすいサーバが最良 ということです。

もう少し細かくまとめてみるとこんなところです。
目に見えている部分はその気になればどうにかなるので、バックボーンを基準にサーバ選定しているということです。

オープンソースで長く使えて改修しやすいサーバの条件
Javaでできている Javaはサーバを作るときに最も標準的なプログラミング言語です。技術者が多いのはメリットですし、Javaは一番メリットが多いからサーバを記述するための標準言語でいられるのです
APIが公開されている メリットは外向き内向きに分かれます。外部向けのメリットとしては、サードパーティ製アプリやプラグインが多数作成されエコシステムが形成されるというものがあります。自分で好きなアプリを作成可能したり、バッチを作成したりもできます。内部向けのメリットとしては、APIに即した実装がされるので内部の設計が明確で分かりやすく、長期的に見たときに論争や仕様誤認の果てに機能がブレていくということが起きにくい、というものがあります。設計書がないプロダクトではAPIが設計書がわりの様相を呈してくるため、これがスッカスカなサービスは安定的な発展は望めません
ブラックボックスがない ソースが全て公開されていることが大前提です。自分で新しい機能を付加するときに、深部まで書き換えなければならない場合があるためです
無駄な機能が少ない 大抵のソフトには「こんな機能使わない」がありますが、Subsonicは機能レベルで巨大な無駄というのが比較的少ない方です
独自仕様が少ない ある程度の独自仕様は避けられませんが「ファイル名をこの形式でつける」といったような仕様を出してくるサーバは個人的に即アウトです。そんな面倒な管理をしたくありませんし、そんな仕様出されたら他の設計も推して知るべしです
楽曲管理に強い 「動画、画像、色々なファイルを全て一極管理できる」的なアナウンスをしているサーバはありますが、私の目から見ると今までそのようなことが満足に実現できたサーバは過去に一つもありません。特に難しいのが楽曲管理で、一般ユーザが使うと仮定しても音楽のブラウジングや検索には比較的面倒な設計/実装が必要です(一般的ではないけれどもプロユースのストレージも実在する分野です)。
サーバ機能が自己完結している 他のサービスから情報を持ってきて利用できる的なサーバもありますが、日本で満足に利用できなければただのデッドウェイトです。特に日本語の楽曲管理の場合は、CDDB経由で埋め込まれたタグやファイル情報の取扱いに専念した方が精度の良いものが作れ、ユーザにとっては仕様がつかみやすくコントロールしやすいです。本質から外れた客寄せ機能は別に望んでいないということです
音声入力やアシスタント対応 次世代型の機能は直近では優先機能ではありませんが、このような布石を打てるサーバは基本設計がデキる人物によって行われたことがわかります。楽曲管理に関わりそうなあらゆるガイドラインを調和的に設計反映させておく必要があるためです。また高速処理が必要なためワンランク上の実装がされている可能性があります
伝統がある 次々と新しいソフトウェアが登場する分野で長期の支持を得られるということは、既に一定の支持基盤を確保し維持しているということです。この点は後発のサーバが一朝一夕に解決できる問題ではありません
支持する技術者が多い 長期の間持続発展するためには多数の技術者の手を経る必要があります。瞬間風速的な数年の話ではありません。楽曲管理のライフサイクルはもっともっと長いです。長期に渡って継続開発が可能な体制か、より良くしていこうと考える技術者を確保できるか、コミュニティの活動は活発か、という点は重要です
ライセンス問題をクリアしている 外見のみで評価するユーザはそこまで気にしないかもしれませんが、技術者視点では内部に爆弾を抱えていないかどうかも重要です。自分がクローンを作りやすいかどうかに関連しますが、他のエンジニアも同じような活動をしやすいかどうかに関係しています

Subsonic系サーバは、自鯖のベースにするのに優れた特徴を持っているということです。
このサイトは全体に渡ってSubsonicラヴな印象ですが、Subsonicそのものがラヴなわけではありません。
上記の観点に合致するようなサーバがあれば既に私は興味を持っているでしょう。

しかし全部クリアできるプロダクトは数十年前から非常に少ないです。
それほど厳しい条件とは思いませんが、現在では候補として挙げられるのはSubsonic後継のAirsonicくらいしかありません。

派生サーバについて

Subsonicは6.0 beta1(2016年2月)までオープンソースでした。
そのため、数多くの派生サーバが存在します。

現存するメジャーな派生サーバは、AirsonicとMadsonicの2強と考えてよいでしょう。

Madsonicはずっと昔から存在するSubsonicフォークです。
色々な機能が付加されています。

Airsonicは正統Open Subsonicの流れをくむサーバです。
Subsonicがクローズドに移行する際にブランド変更を行ったLibresonicというサーバが存在し、その後継にあたります。
Subsonicのコミュニティにいたエンジニアは主にこちらへ移行しました。

このサイトで公開しているのは、Airsonicをベースに機能を付加しているJpsonicというサーバです。

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